自分は一番になれないと知った大学2年生の春、前田望(ノゾ)はうだうだと硬式野球部で毎日を過ごしていた。そこにやってきた昔馴染みの高橋光輝(コウ)はレギュラー獲得に向けて一心不乱に練習する。若者2人が織りなす笑いあり涙ありの熱血スポ根演劇!
(TGRホームページ 作品紹介より)
大学の野球部員、高校時代の情熱が消えプロになれるわけでもなく、努力することに意味があるのか?などと思いつつ2軍から1軍入りを目指す物語。
「演劇家族スイートホーム」は大学生で構成されている劇団で若さが眩しい、と思ったら40代のボクでも胸にグサグサとくるセリフの連発。観劇しながら思った。悔しい思いをするのは物事に真剣に取り組んでいるからだ。悔し涙を流せるのは努力の限りを尽くした者だけだ。ボクは最近悔し涙を流しただろうか・・・・・?
クライマックス、1軍入りを目指した打撃テスト。「頑張れ!」と松尾佳乃子さん演じるマネージャーが叫ぶ。この何でもない一言で劇場の空気が変わったように感じた。マネージャーが選手を応援するのは当たり前の事なのに・・・。
やられたと思った。それまでの単なる笑いと思えた場面、意味あるの?と思えたセリフの積み重ねが意味を成した瞬間だった。そもそも演劇というものはセリフが聞き取りにくいことがあるし、映画のようにネタバレで事前に情報を仕入れることができない。確認したいことがあっても漫画のようにページを遡ることができない。
だからこそ重要なところでは聞き取りやすい、簡潔なセリフでインパクトを与えることが望ましいとボクは思っている。
例えるなら2014年BLOCHで上演された『朝のごはん。愉快なアカエボシ。』の「お母さ~ん」のように。ボクは映像で観たのだけれど意識を刈り取られるような衝撃だった。本当にくらっとした。あんな風に言われたらボクも刺すな、そう思える一言だった。
「頑張れ」にしろ、「お母さん」にしろ、日常でよく使われる言葉である。そんな言葉で全てをひっくり返すような物語はボク好みであった。勿論、感動のさせ方は色々ある。脚本を書いた高橋正子さんにはセンスの良さを感じるとともに、新たな魅力ある脚本を期待したい。
余談ではあるが、開演早々マネージャー(竹道光希さん)の胸に目が行ってしまった。デカい、とにかくデカいのだ。胸に目を奪われた自分を恥じていると、竹道さんが後日ツイッターで「あれ、偽パイですよ、ふふふふふ。」とのこと。やられたなーと思うと同時に、なんだか残念に思ってしまったのは男の悲しい性なのだろうか?
2018年11月4日(日)13:00 演劇専用小劇場BLOCH
投稿者:S・T(40代)
text by S・T